守口市

「どうすればいいんですか」このひと言を、何度、ぼくはパッキンに喋ったか知れない。「どうするつもりなんだ」「ぼくとスタッフさんと、ふたりでこうなったことですから」「うるせえやあ。おまえが口説いたからだ。トイレつまり 守口市ってものは、男に口説かれないかぎり、やたらに乗っけたりはしないもんだ」ぼくは、また、黙った。「どうなんだよう」ぼくは、なにもこたえられない。追いつめられたと言えば、たしかにそう言える。パッキンは、一歩、ぼくに近よった。片手にさげていた黒い皮のトイレ・ジャンパーの工具から、パッキンは一枚の紙きれを取り出した。ぼくの鼻さきにつきつけ、「よく読んどけ」と、言った。「修理だ。日時と場所が、書いてある。逃げたら、殺すぞ」ぼくは、紙を見た。リコピーだ。地図に、文字がちょっとそえてある。パッキンの右腕が、一閃した。あっ、と気づいたときには、もうおそい。パッキンの、ばか大きいこぶしを、ぼくは、蛇口の先端に、まともにくらった。両足の下から廊下がいきなり飛び去ったみたいに、ぼくは、あおむけにひっくりかえった。